性日記1「性への目覚め」②

まだ明るい夏の夕方5時過ぎだったでしょうか。
私の両親は共働きで、父は夜遅くまで、母もあと1時間しなければ帰ってきません。
2つ年下の弟は地元の小学校に通っていましたが、下校してすぐに遊びにでかけてしまったらしく不在でした。
小説の主人公弥生ちゃんは、砦の長(おさ)の命令によって本当に裸で過ごすことを強制され、小さな子ども達の世話をさせられていきます。
子守や掃除、洗濯、食事の準備・・・。
すべて裸でやらされている弥生ちゃんの羞恥心や絶望感を想像すると、下腹部にチリチリと焼かれるような感覚が生まれました。
特に私の心を波立たせたのは、まわりの子ども達はみんな衣服を身につけている中で、弥生ちゃんだけが裸でいなければならないという状況です。
これまで躾(しつけ)が厳しい女子校で教育を受けてきた私は、見ず知らずの男性の前で裸になることなど想像したこともありませんでした。
その私にとって、衆人環視の中ですべてを晒している同い年の女の子の存在は、たとえそれが妄想の中の出来事だったとしても、とても衝撃的な出来事だったのです。
大人になった今では、これがCMNF(着衣の男性と裸の女性)と呼ばれる状況だと理解できます。
ただ、小説を書いたアユミちゃんもまだS学6年生ですから、彼女がそういった官能小説のような文章を書きたかったわけではなかったでしょう。
彼女が面白おかしく描こうとしたシーンが、私の身体の奥底に潜む琴線を強烈に揺り動かしただけなのです。
私は、その場で制服を脱ぎ捨てました。
居ても立ってもいられないような、焦りにも似た感情に突き動かされたのです。
リビングで着替えたり、下着姿になるなんて、普段家族がいる時には絶対に許されないことでした。

汗ばんだ素肌を、エアコンの風が心地よく撫でていきます。
私は、弥生ちゃんが辱しめを受けるシーンを何度も読み返しながら、彼女と自分自身の心情とを重ね合わせていきました。
小説の中、砦の長の命令で、朝早くから広場の掃除を命じられる弥生ちゃん。
そこは、砦の武士たちが頻繁に行き来する一角で、ちょうど同い年くらいの少年武士達が好奇の目で彼女の身体を眺めていきます。
中年の男性や子供だけでなく、同年代の男子たちに裸を見られてしまう。
こんな恥辱があるでしょうか。
もし私だったら。
私が弥生ちゃんのように裸で掃除をさせられて、そこを同じS学6年生くらいの男子たちに見られたりしたら。
それだけ恥ずかしく、どれだけ居たたまれない気持ちになるか・・・。
そう考えると、胸の奥から下腹部にかけて「キュッ!」と締めつけられるような感覚に襲われました。
心臓が高鳴り、呼吸をするたびに胸のあたりに切ない痛みを感じます。
身体全体が火照ったような状態でした。

この時、「盛夏服」と呼ばれるワンピースタイプの制服を着ていたので、時期は夏休み前の7月頃だったと思います。
6月下旬が誕生日の私は、まだ12歳になったばかり。
この世界に生まれ出て12年しか経っていない私は、この時「性的な興奮」を感じていました。
下世話な言葉を使えば、まだS学6年生であるにもかかわらず、私は確実に「ムラムラ」していたのです。
しかし、オナニーやマスターベーションなどという言葉すら知らなかった私は、このムラムラをどう処理するべきかを知りませんでした。
そもそも、この気持ちの正体すら分からず、得体の知れない不思議な感覚に戸惑っている状態です。
時計を確かめると、普段ならあと30分もすれば母が帰宅する時間になっていました。
弟については、いつ帰ってきてもおかしくありません。
その限られた時間の中で、私はこのムラムラを何とか収めなくてはなりませんでした。
【1-3に続く】
安生梨花